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ある方のある話 2

2014.01.07 15:27|雑感
食堂での働き口を姉が見つけてくれた。
姉からは「客とは無駄話するな」ときつく言われた。
それさえ守っていれば、あんたは真面目なんだから
仕事を続けられるはずだから。
そしたらお金も手に入り、おまんまも毎日食べられるから、と。

彼女はお客の顔を見ないように、
そして、器量が悪い自分の顔が見られないように
下を向いてもくもくと働いた。
愛想がない、暗い、と怒られながらも、
しゃべらないようにしゃべらないように努力して働いた。
ほかに仕事がない。ねーちゃんが探してきてくれた仕事だ。
でも、ある日、店主に呼ばれた。
「あんたがいると、店が暗くなるんだよね。真面目なんだけどな。
悪いんだけど、今日で・・・。」
彼女は限界だった。
「うっせー!このバカ!早く金よこせ!」
彼女は叫んでいた。
店主が差し出した給料を奪い取ると、店から走り出た。

家に帰り、この話をすると姉は豹変した。
「あんたを養う金はないよ!今日もらった給料、よこしなさいよ!」
彼女はお金を渡した。
「次の仕事、自分で見つけなさいよ!」
次の日から仕事を探しに出かけたが、小学校もまともに行っていない人間に
そう簡単に見つかることはなかった。
日に日に次第に、姉の彼女への態度はきつくなっていった。
「あんたには金がかかるのよ!」
蘇る母親の幻影。幻聴。
”あんたには金がかかるのよ!”
「うるせー!しずかにしろ!!」
ある夜、彼女は玄関のガラスをめちゃくちゃに叩き割った。
叫びながら、粉々になるまで、血だらけになって。
そして、意識を失った。

目が覚めたとき、病院の精神科にいた。
姉がそばにいた。
「あんたね、統合失調症だって。わかる?」
わかるわけがなかった。
「かなり、重い精神の病気だってさ。すごく重いんだって。」
”精神の病気”はわからなかったが、重い病気はわかった。
私はびょうき。びょうき。びょうき。。。。
「しばらく入院してろって。わかる?あんた、ここにいるんだよ。
治るまで。よくなるまで。ここにいるの。わかる?
私はあんたの精神障碍者の申請をお役所にだしてくるから。
あんたはここから治るまで出ないでよ。」
歩けるようになると、隔離された、
小さな窓が外に向けて一つある部屋に移動した。

それからのことは、あまり話したくない、と彼女は言った。
治療の名のもとにいろいろなことをされ
いろいろな薬を飲まされた。
泥沼のような体と泥沼のような心。
「全く体が動かなくなった時もあったねー。」
退院するには、時間がかかった。

そのあとも姉と住んだ。姉は結婚していて家を建てていた。
その2階の一室が自分の部屋だった。

それでも、まるで波のように、幻影と幻聴は襲ってきた。
”早くお金をよこしなさいよ!”
それは、母親であったり、姉であったりした。
自分はお金を稼いでいない。
お金がなければ生きている意味はない。
生きている意味がない。お金がない。
生きている意味がない。お金がない。

「体がよくなったなら、働ける?」
そんな姉との軽い会話から発作は起こった。
「うるせー!ばか!」相手を罵る言葉が次々と出て
家のものを破壊して回った。
家を飛び出し車道の真ん中を歩いているのを通報されたこともある。
発作を繰り返し、意識を失うことも繰り返し
入退院を繰り返した。

姉は疲れていた。
これ以上の同居は無理だ。
彼女もわかっていた。姉に無理をさせていることと
自分が姉につらく当たってしまうのを止められないことが。
そして、一人暮らしを始めた。姉が手配してくれた。
姉はお金を援助すると同時に
「体が大丈夫なら働きなさいよ。」と優しく言い、
それが彼女の精神の病を悪化させていった。
姉が私を殺そうとしている、そんな悪夢を毎日見た。
「やめろー!うっせー、ばかやろー!」
部屋にあったものを破壊してまわり、血だらけになり
泡を吹いて奇声を上げ意識を失った。
長期の入院となった。

退院後、彼女は施設での暮らしを希望した。
でも、どこの施設でも長続きしなかった。
共同生活ができないのだった。
少しでも自分の思い通りにならないと「どけ、このやろー!」
「うるせー!ばーか!」と大声で叫び
施設から”ここでの生活は無理”と判断されるのを繰り返した。
そのたびに、精神薬は強いものになって行った。

うちの施設は、6か所目だった。
最初は、次の施設が受け入れ態勢を整えるまでの1か月間のみの
契約でショートステイの形だった。
それが、彼女がうちを気に入り、うちは彼女をソフトに受け入れた。
「うるせー!」と叫ぶのも個性の一つ、なんてゆるい解釈のもと。
今、彼女は、かなり強い向精神薬を
(普通の人が一つ飲んだら、まず6時間は起き上がれないだろう薬)
一日に5本飲んで、落ち着いている。
発作は2年間で一度だけだ。(その時は玄関の窓ガラスを粉々にされた。
全く誰の話も聞けない状態で、錯乱し、興奮し、泡を吹き
落ち着くまで無理に押さえつけることしかできなかった。
全く別人だった。)
今でも自分が「重い病気」と思い込み、薬がないと大騒ぎしたり、
時々大声で誰かを罵ること「ばかやろー!しずかにしろー!」
・・・を別にすれば、うちでの生活を「楽しく送っている」そうだ。
「悪い夢も見なくなったよ。」

「あのな、ねーちゃん、さ。」
彼女がめずらしく静かに私に話しかけてきた。「わかったんだけどな。」
「なにが?」
「人間ってな、生きているうちに、どっかで、集団で生活して、
他人の中で暮らすようになってるんだな。」
「そうかもしれないね。」
「学校にも行ってないからな。大勢で暮らすってどんな気分なのか
全然わからなかった。」
「そう・・・どう?大変?」
彼女は少し考えていた。
「大変だな・・・。怒鳴らないように、叫ばないように
毎日、気を付けてるよ。大変だ。」
この人は自分だけを見てきた。
他人からどう思われる、とか
他人を気遣おうとかをほとんど考えずに生きてきたんだ。
そして、今、それに気が付いている。
つまりは、それだけ、ここでの生活を続けたいんだな、とも思う。

彼女は少し笑いながら続ける。
「大変だけどな。何かの時に、ありがとう、とか
笑うと可愛い、とか、痛そうだけど大丈夫?とか、そう言われるとな。
なんだか・・・へへへって笑っちゃうな。」
「みんな、おんなじですわ。」
私も笑って言う。「おんなじなんですわ。」

大変だけど、時にへへへって笑っちゃう。
そうなるように人生できている。
・・・・のかもしれない。


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Author:mira
パートの介護職のへタレおばさん。
そして
ちょっぴりヲタクが自慢。
私の知識の80パーセントは
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