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ターミナル16

2013.11.19 19:59|仕事
ケアの最中にとんとん、とノック音がした。
「あの・・」と娘さんが顔を出した。
「すいませんが、今、ケアをしているので
少し、廊下でお待ちいただけませんか?」そういうと
娘さんは「すいません・・」ドアをゆっくりと閉めた。
「きれいな人だね。」ナースが言う。「女優さんみたい。」
葬儀屋との打ち合わせは終わったんだな。
本当に手際がいい。

ケアが終わり、娘さんと息子さんに声をかける。
私はSさんのクローゼットの中の布団の整理をしていた。
その私に娘さんが声をかけてきた。
「父は・・ここで、穏やかだったでしょうか?」
「Sさんは・・」先ほどと同じ話をする。
毎回職員に感謝していたこと、
だから、Sさんを悪く思う職員はいないということ。
最初は厳しかったけど、この頃は痛みに耐えて
こちらを気遣うことを言っていたこと・・・
「それは本当のおやじじゃないんだ、みんな知らないだけで!」
息子さんはまた同じことを言っていた。
それを制するように娘さんは聞いてきた。
「近頃はどんなことを言ってましたか・・?」
「そうですね・・・夜勤に聞くと、夜中にコールが2、3回
必ずあって、息子さんに会いたいとか、
息子さんに連絡取ってくれとか、痛みで眠れないとか、
怖いから真っ暗にしないでくれとか・・。
息子さんに会いたい、っていうご要望は頻繁にあったそうです。」
夜勤からの申し送りの時に毎回のようにこの話はあった。
息子さんに会って、何の話をするつもりだったのだろう・・。
それを聞いても、答えなかったそうだ。

その話をすると、息子さんは、黙ってしまった。
何をどう考えているのかはわからない。
複雑な気持ちなんだろう。

「父はあと、どれぐらい・・?」
娘さんは、おそるおそる聞いてきた。
「わかりません。でも、血圧も脈も今は安定しています。
急変しなければ、まだ、この状態が続くかと。
では、私たちは退室しますので、なにかあったらコールを・・。」
「わかりました。」

家族のごたごたした感情に巻き込まれたくはなかった。
私はSさんのケアをしていればいいのだ。
そのケアももう終盤だった。
多分、もうすぐ、終わるな。
そして、計測のみになる。
私がSさんにできることは、なくなる。

ふつう、”介護上のケア”というのは
”自立支援”が根底にある。
その方が自分で意欲を持って動けるようにお手伝いする
というのが「自立支援のケア」で
これが介護の基本中の基本だ。
でも、ターミナルケアは方向性が全然違う。
「旅立ちの準備」とでも言おうか。
それが・・その未来のなさが・・・
どうしても、切ない。

廊下には、もう、傾いた日の光が差し込んでいた。
もうすぐ、夕日色一色になる。

そっか、もう、Sさんはどら焼きを食べないんだな。
ふと、急にあの時のSさんの姿が浮かび上がってきた。
「気持ちが似ています。」
息子さんにそれを言いたかったのかな。
わからないけど・・・。

もう、どら焼きを食べない
そんなところに行っちゃったんだな・・・。
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Author:mira
パートの介護職のへタレおばさん。
そして
ちょっぴりヲタクが自慢。
私の知識の80パーセントは
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