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ターミナル14

2013.11.17 19:11|仕事
私は一度事務所に戻った。
実はこのとき月初の忙しい時期で、
急ぎの事務の仕事もあった。

事務職をしていると、おたんこなーすが来た。
「Sさんのケア、ちょっと交代するよ。
miraちゃん、他の仕事もあるでしょ。
先に休憩とりなよ。お昼も食べちゃいな。」
「いい?大丈夫??じゃ、そうさせてもらうわ。」
お茶を飲み、社長の奥さん差し入れのおにぎりをいただく。
前回は・・・こんな余裕なかったのだから、
私も図太くなったものだ。

前回のターミナルケアの時
非常にわたしにとってきつかったのは
何度も何度も何度もケアをしなければならない状況と
その時の「臭い」と「冷たさ」だった。
それは、”絶望的な”ものだった。
寝たきりの方のケアの延長だと思っていた私には
それは非常に辛いものだった。
少し、直接的なことを言わせてもらえば・・。
職業柄、排せつ物の臭いには慣れている。慣れきっている。
でも、ターミナルケアと褥瘡のケアに関しては
その臭いには絶対に慣れることはないだろうと思う。
本能や身体全体が全面拒否するものだ。
これは、他のベテランさんにも聞いた時も同じ答えだった。
あれだけは、辛い、慣れない、と。
本当は、だから、
他の経験のない介護士にもやってもらいたかった。
でも・・「怖い」か・・・。

しかし。
それを引きずったりしないで、
私は今、こうやっておにぎりを食べている。
食べて体力つけないと、まだ、ケアが待ってる。
そんなことを考えているのだから
ナイロンザイルの神経のおばさんだ。
成長なんだか、退化なんだか。

おたんこなーすが戻ってきた。
「どう?」そう聞くと
「まだ下顎呼吸は始まってないし、安定してる。」
まだ、大丈夫そうだ。早く娘さんたち、来ないかな・・。
「ケアはまだ、必要?」
「うん。まだ。変わらない。でも、あともう少しだと思う。」
「そうか・・。」
時計を見る。13時。
ケアを始めたのが、8時半。
多分あともう少しでケアが必要なくなる、はず。

今までのSさんの記録を一気につけて
事務職に区切りがついたころに
「miraさん、一緒に計測行くよ。ケアもあるし。」
Tナースが声をかけてきた。
二人でSさんの部屋へ向かっている最中に玄関で
Sさんの娘さんの声がした。到着したか!よかった!
息のあるうちに面会できそうだ。
ケアを急がなければ。

「計測します。血圧、上64、下計測不能。KT36.5
SPO2・・・が・・・エラーが・・・
ちょっと、SPO2、miraさんやってみて。さっきからエラーなの。
Pが・・非常に弱い・・・60・・
頸動脈でとりにくくなってきています・・
呼吸数お願い。」
私はサーチュレーションと格闘し、4回のエラーの後、数字を取った
「SPO2・・95。呼吸数カウントします。」
いち・・・に・・・・さん・・・
「一分間に28。」
確実に減っている。
横で息子さんがそれを聞いていた。
「おやじはまだ大丈夫ですかね?」
「まだ、安定していると思います。」そう答えた。
「では、姉が来ているんで、今後の打ち合わせを葬儀屋としてきます。」
息子さんは出て行った。
あらあら、娘さんたちは、Sさんと面会もせずに
葬儀屋との打ち合わせですか・・・・。
Sさんはまだ耳が聞こえているはずって言ったのに、
「葬儀屋」なんて・・言わないでほしかったな・・・。

「じゃ、ケアを始めますか。Sさん、ごめんね。
また、ちょっと動いていただきますね!」
私はSさんに呼びかけた。
「痛い、痛い、おっしゃっていたのに、本当にごめんなさい。
ケアがへたくそで。右側が痛いって知ってたのに
ケアの時、どうしても右側を下にしなくちゃいけなくて・・
痛い、痛いってあれほど・・おっしゃってたのに。
へたくそで、何度も痛そうな声をあげていらして・・
すごく痛そうなお顔をしていて・・・」
その時、私の中で何か止められないものがぐっと迫ってきた。
「いちど・・ちゃんと謝ろうと思ってたんです。
Sさん、本当にごめんなさい・・ケアがへたくそで。
ごめんなさい・・痛がらせてしまって・・・」
私はそれを必死で抑えた。

介護士なんて泣く立場にはいない。
仕事で接しているのだから。
泣くなんて最低。
泣きゃ済むと思ってたら最低だ。

「痛くないように、ケアしますね!」
私はもう一度Sさんの耳元で叫んだ。



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Author:mira
パートの介護職のへタレおばさん。
そして
ちょっぴりヲタクが自慢。
私の知識の80パーセントは
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