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ターミナル11

2013.11.13 21:31|仕事
部屋はまだ明るい朝の陽ざしでいっぱいだった。
それは普通の、ごくありふれた日だった。
車の音やどこか遠くの踏切の音や
階下のディサービスのレクの声が
のどかに、のんびりと響いていた。
気持ちのいい日だ。
本当に、よく晴れてる。
私も最期はこんないい日がいいな・・・・。
ふと、そんなことを思いながら、ケアを進めていた。
「Sさん、もうすぐ息子さんがいらっしゃいますよ。」
Sさんの耳元で私は叫んだ。


3回目のケアの最中に息子さんはいらした。
「あの・・」と恐る恐るドアが開いた。
「すいません、ケアはもうすぐ終わります。
少しだけ廊下で待っていていただきませんか?
すぐ終わりますので。」
私はケアを急いだ。
終わってから、息子さんを呼び出す。
「お待たせしました、こちらへ。」
そして、Sさんの耳元で
「むすこさんが!きましたよ!とんできましたよ!」
大きな声で言った。「きこえてますか!?」
もちろん、反応はなかった。
「ども・・・・」息子さんは頭を下げながら入ってきた。
「事務室でおやじの状況は聞きました。
予想よりずっと早かったので、驚きました。」
「そうですね・・私たちも驚いています。」

息子さんはSさんの顔を見に近寄り
「こんな感じで逝ってしまうものなんですかね?
こんな風にすーはーって穏やかな感じで・・・」と
つぶやくように言った。
「いえ、あの、下顎呼吸・・・うーん、なんていうか、
規則的な呼吸ではなくて、顎を上下させる激しい呼吸に
変わるのが一般的と言われてます・・。」
前回のターミナルケアの時も、父の時も、
親戚の人を看取った時もそうだった。

下顎呼吸は苦しそうに顎を上下させ、酸素不足に陥った脳に
必死で酸素を供給しようとする体の反応、と言われ、
また、傍から見ればすごく、すごく、苦しそうな呼吸だが
本人は苦しくないと言われている。
もちろん、本人は苦しくないっていうのは理論上で、
誰かが確かめたわけではない。
見た目通り”非常に苦しいのだ”という人もいるそうだ。
でも、「あれは、苦しくはないのですよ。」と言われると
周りの人の慰めになる。
苦しそうに見えるけど、苦しくはないのだ・・と
誰かに言われると、ほっとする。
最期の最期まで苦しくて苦しくてでもどうしようもできない
という状況は周りにはとても辛いのだ。
だから、私は信じている。
下顎呼吸は苦しくはないのだと。

「Sさんは、まだ、規則的な呼吸で下顎呼吸が
始まっていないのでまだ、この状態で安定されるかと。
先ほどいらしてたお医者さんは言っていました。」
「そういうものなんですか。」
息子さんはSさんの顔を眺めながら言った。
「そうらしいですね・・・」

「すみませんが、もし、よかったら。」
私は息子さんに向き合った。
「Sさんのひげを剃ってもいいでしょうか?
お二人きりでお話になりたいと思いますが、
Sさんのひげを剃る時間をいただきたいのですが・・」
そういうと、息子さんは笑った。
「話も何も!お願いします。
おやじのひげ、剃ってやってください。」
「ありがとうございます。」
私は頭を下げ、髭剃りの準備をした。

これからお孫さんたちもいらっしゃるという。
最期にきれいなSさんにしてあげなければ。
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Author:mira
パートの介護職のへタレおばさん。
そして
ちょっぴりヲタクが自慢。
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