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忘れてはいけない

2013.09.29 18:30|雑感
ある利用者さんのことを書く。
私はこの方をとても・・・なんていうか
尊敬というか、畏敬というか
そういう気持ちをいつも感じさせられる。

このかた、仮にFさん(90歳)、かなり認知症が進んでいらっしゃる。
自宅でお孫さん(30歳)と曾孫さんと3人で暮らしていたが
(お孫さんは離婚している)階段から落ち
ひどい骨折をして、入院後うちのサ高住入居となった。
もちろん、ご本人が入居を希望したわけではない。
お孫さんがFさんを四六時中見ているわけにはいかないため
退院後にまっすぐサ高住にいらした。

毎日毎日朝早く、昼ご飯あと、夕方と。
「バスに乗って帰ります。お世話になりました。」
とパジャマと下着をきれいにまとめて風呂敷に包み
それを片手に持って、おぼつかない足取りで
丁寧に職員にあいさつをし、玄関から出ようとする。
「Fさん、どちらへ?」
「●●に、バスで帰ります。」
「Fさん、バスは今ちょうど出ちゃったから、あと
3時間後なので、お部屋のほうで待っていてください。」
そういうと、本当にがっかりした表情で
「あと、3時間・・そうですか。」
「長いですからね・・バスの時間までお部屋のほうで
待っていてくださいね。お時間になったらお知らせしますから。」
「そうですか・・では、そうします。」
これを繰り返す。

つまり、ここは・・Fさんにとって
いまだ「居場所」ではない、ということだ。
Fさんは入居して3か月になる。
うちとしても、ここまで根強い帰宅願望は初めてのケースだ。

このFさんのお孫さんは一日おきにうちの施設に来る。
仕事が終わったあと、車で30分ぐらいかけて会いに来るのだ。
そしてFさんは、面会に来ているのが、孫ではなく娘と思っている。
(娘さんは今、遠く離れた場所に住んでいる)
Fさんの中では・・・まだ娘は若く、孫は幼いままなのだ。
「私も帰るよ」Fさんは必ずお孫さんに言う。
「おばあちゃんは、ここに住んで、私が会いに来るからね。」
お孫さんはFさんに必死に説明する。
「おばあちゃん、わかった??おばあちゃんは、ここにいてね。
私が会いに来るからね。」
お孫さんの口調には。
本当は私がおばあちゃんを見なくちゃいけないのに、それができないから
施設に預けていて・・・そして、その施設に迷惑をかけてしまっている、という
自責のような気持ちがあるのが、こちらにも伝わってくる。

Fさんには、わからない。
どうしてここにいなくちゃいけないのかということ。
「私は体がよくなったから、家に帰って、ご飯をつくらなくちゃ。
洗濯も取り込まなくちゃいけないし。
孫も学校から帰ってきたら、みなくちゃいけない。
こんなところでぼっとしているわけにいかないよ。」
そう、笑顔で、お孫さんに言う。
お孫さんは・・苦笑して、
「でも、今はここにいてね。まだ体が本調子じゃないから。
会いに来るからね。」
そう言って帰ろうと玄関まで行く。
「お世話になります。」そう職員にあいさつし
「じゃあね、おばあちゃん、また、来るよ。」
Fさんにそういうと、Fさんの顔色が変わった。

お孫さんにむかって、とても厳しい顔つきになり
「ちゃんと仕事に行くんだよ。周りに迷惑をかけちゃいけないよ。
勝手に仕事休むんじゃないよ。それから身なりはきちんとして。
挨拶も大切だからきちんとしなさい。
職場への行き帰りは気を付けて、交通事故に合わないように。
それから、職場では無駄話はしないんだよ。わかった?」
厳しい口調ではっきりと話す。
お孫さんは苦笑して聞いている。
「わかっているよ、ばーちゃん。」
「人に迷惑をかけちゃいけないよ。」
「わかっているよ、ばーちゃん。」
お孫さんは笑顔で帰って行った。

その姿を見るたびに、思わされる。
この方は、Fさんは、
子供たちが社会人として恥ずかしくないように
困ることがないように
毎日毎日、子供たちに言い続けてきたんだ。
この方にとって、たぶん、それは、生きがいというか
しなければいけない義務だった。
子供たちをきちんとした社会人に育て上げなくては。
いろいろな困難の中、それがFさんを支えてきたのだろう。

私たちがとらえていたFさんは。
いくつかの疾患を抱え、ADL(身体能力)が落ち続けている
認知症の介護度4の一利用者さんで。
帰宅願望が非常に強い難しい認知症利用者さん。
でも、そんなの全然Fさんをわかっていない。
なにがFさんにとって大切なのか。
なにがFさんを支えてきたのか。
それがわからないと、対応やらケアやらは
ただの上滑りなものだ。

この前、初めて、Fさんが仕事の話を私にした。
「看板の工場の、色づけの部門で。私は
一番長く働いていたから、指導者になって、若い子に
いろいろ教えたっけ。仕事は、面白かった。とても。」
「家に帰る」以外の話をしたのが初めてだったので
とても興味深く聞いた。
「大変じゃなかったですか?」
そういうとFさんは微笑んだ。
「いや、仕事はとても楽しかったし面白かった。
周りに迷惑をかけない、無駄話をしない。
これさえ守っていれば、仕事はうまくいくもんだ。
あ、それから・・・。」
「なんですか?」
「忘れなくちゃいけないことは忘れて。
忘れてはいけないことは忘れないことだね。」

Fさんにとって、
なにが忘れなくちゃいけないことなのか
なにが忘れてはいけないことなのかが
少し、わかるような気がした。

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Comment

No title

なんだか母とダブっちゃって・・・
涙が出ちゃいましたv-409

どんなに認知症が進んだ方でも
その人の生きて来た姿が言葉や行動から想像できますよね。

几帳面だった母は ホームで洗濯物をたたむお手伝いをする時
誰よりもキッチリとたたむそうです(*^_^*)


今の場所が 早くFさんの居間所になるといいですね。

サンタママさん

そうですね・・。
認知症が進んだ方の、歴史というのは
知ろうとしない限り知ることができないのではないか、と思います。

Fさんは今日も、家に帰るバスを待って
玄関のソファで座っていました。
「寒いから、食堂のほうへ・・」と声をかけても
「ありがとうございます」と丁寧に頭を下げて、でも
玄関から離れようとしませんでした。
Fさんのそんな姿を見ると、
私たちもじっくりとFさんと付き合っていかなければと思います。
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Author:mira
パートの介護職のへタレおばさん。
そして
ちょっぴりヲタクが自慢。
私の知識の80パーセントは
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