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アリガトウ

2013.09.10 22:27|仕事
こういう記事を書くのはあまり好きではないのだけど
利用者さんのIさんが亡くなった。
前に記事に書いたことがある方だ。(2013.7.8)
自分の体の不調を・・かなり進んだ認知症のために
はっきりと伝えることができず
家族への暴力という形で訴えてきた方だ。
家にいると、奥さんに向かって包丁を振り回していた。
とても危険な状態なので、とりあえず
家族が休息するためにディサービスを利用するという
プランだった。

それでも、ディではIさんは紳士だった。
外面はすごくいい、というサマリー通りで
誰が何を言っても「はいーはいー」
そしてスタッフには
「こんな美人さんばっかりで、ここに来るのが楽しみですよ。」
と笑顔を振りまいていた。
これはもう絶対本心じゃないなとわかっていても
そんなIさんを悪くいう人もいなかった。

入浴の時に奥さんのことをいろいろ話をした。
本当は自分と結婚する前に奥さんには恋人がいたらしい・・・
(これは単なる思い込みだったらしい。奥さんは否定していた)
自分の弟のほうがずっと男前で、不細工な自分は
いつかきっと奥さんに愛想つかされるに違いない・・
80歳近い男の方が、まるで17,8の男の子のように
コンプレックスを抱えているのがよくわかった。

俺はだめな人間→暴れる→奥さん怯える→自暴自棄
そんな構図がよくわかった。
ディの職員はみなIさんの話をよく聞くことに努めた。
Iさんはものすご~く奥さんが好きだった。

ある日、Iさんがディに来て驚いた。
Iさんは歩けずフラフラの状態・・・
(どうしてこんな状態の方を連れてきたのか!!
その時の迎えの担当が看護師だったのが信じられない
何を考えているんだ)
「おはようございます」とIさんの靴を上履きに履き替えようとし
Iさんに触ると驚くほど、熱い。なに、この、熱感・・・
鳥肌が立つ。戦慄が走っていく。
すぐに熱を測ると39.3度。
Iさんは・・ご自分はご存じではないが、末期のがんを抱えている。
このときIさんの手に触った感覚が今でも忘れられない。
ぶにゅ、っと低反発枕のような感覚。
えっ!と一瞬寒気がする
このひどいむくみ。こんなに・・こんなに・・・

水が溜まり膨張している腹部。
そしてこのむくみきった手足。そして高熱。
もう・・・末期も末期。
これは、もう・・・・。
すぐにご家族に電話し、病院受診の手筈を整える。

私はご家族が迎えに来るまでの間、横になったIさんの
そばで椅子に座っていた。
高熱のせいか、Iさんは眠れない様子だった。
「お手数をかけて・・・すまんです・・・」
Iさんは礼儀正しかった。
「そんなこと気にしないで、休んでください。」
「でもね・・。」
「誰だって具合が悪い時はありますよ、Iさん。
そういう時は、無理せず、休んでくださいな。」
看護師も見に来ない。気にならないのか?Iさんのこと・・・。
早くご家族が来ないか。こんな辛そうで・・・。
「わたしゃもう・・」
「え?」半開きのうつろな目でIさんは天井を見つめていた。
「わたしゃもう、ながくないかも・・。」

否が応でも父とオーバーラップする。
私への父の最期の言葉は
「俺はもうだめかもしれない」だった。

「そんな・・」私は言葉を探していた。
Iさんは私の方に顔を向けた。
ぼーっとしたまなざしで焦点があっていないようだった。
私を見ているのかもしれないし、
そうじゃないかもしれなかった。
小さい声で、Iさんは言葉を発した。
「アリガトウ」
私は言葉をなくした。

しばらくして娘さんが来て、Iさんを車いすに乗せ
病院へ行き、すぐに入院となった。
それから、ちょうど一か月後に
Iさんの訃報が届いた・・・。


傍から見れば。
80近い末期がんのじーさんが亡くなったという
どこにでもある話なんだけど。
別にドラマティックでもなんでもないのだろうけど。

人が一人、二度と会えなくなってしまう・・
っていうのは、やっぱり重い。
ちらほらと。
エピソードやら表情やら口調やらを
数人の人の心に振りまき、
それが静かに雪のように降り積もっていく。
この重さがその人の命の重さのような気がする。
そして、やはり、思わざるを得ない。
私は、Iさんにできる限りのことをしたんだろうか。
この重さに見合ったことを
Iさんにしたんだろうか。

Iさん、ありがとうございました。

合掌。
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